昭和・平成時代は、アパートを借りるときには保証人が必要で、不動産管理会社と大家さんの審査を受け、了解が得られると借りることができました。大概保証人は親や親族にお願いしてなってもらうことが多かったです。
平成時代前半、賃貸物件を探しに不動産屋に行ったことがあります。いくつかの物件を案内してもらい、借りたい物件を決めました。不動産屋の主人にぼくが市役所の職員だというと、主人は笑顔で物件のオーナーに電話して、立派な人だ、誠実な人だと繰り返し、保証人なしで賃貸契約をしました。この人はぼくの何を知っているのだろうか?
同時期に、借金の保証人になり借金の肩代わりをさせられる多くの事例が発生しました。保証額について、借金額だけでなく遅延損害金が加算され限度なく積み上がります。保証人の破産が多々あったため、保証人になることを依頼することで、人間関係がぎこちなくなることもありました。
国は2004年に貸金等債務(債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)について、保証額の極度額を定めなければ効力がないと民法を改正しました。しかし保証については、貸金等債務だけではなく、家賃債務等についても同様であったため、国は2017年に個人根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約)についても保証額の極度額を定めなければ効力がないと民法を改定しました。
(個人根保証契約の保証人の責任等)
「e-Gov法令検索」<https://elaws.e-gov.go.jp/>
第四百六十五条の二 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
景気が低迷する中、高齢化等社会情勢の変化や家族の在り方等の意識の変化が進み、居住用建物の賃貸時に保証人不在のため、賃貸不能事例が発生しました。家賃保証の需要が高まり、家賃保証会社が設立されるようになりました。
保証内容、保証料の現状例を下の表に示します。
保証会社 | 未納賃料 保証 | 明渡訴訟 費用 | 残置物撤 去費用等 | 原状回復 費用保証 | 初回保証料 | 更新保証料 |
A社 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 50% | 30% /2年 |
B社 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 50% | 2% /月 |
C社 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 50% | 10,000円 /年 |
家賃保証会社が増えるにつれて、家賃保証に係る苦情が増えました。苦情例を以下に示します。
○過大・不明瞭な請求
出典:国土交通省ウェブサイト (001153371.pdf (mlit.go.jp))
・身に覚えのない保証会社からの請求(説明を求めても根拠が示されない)
・不明瞭な請求(求償の内訳が不明瞭)
・過大な手数料を請求された(法定された年率14.6%超)
○契約・説明
・保証契約を結んだ覚えがない
・更新手数料について説明を受けていない。
○その他
・保証人がつけられないから保証会社を利用するのに、保証会社から保証人を求められた。
・滞納立替え分の返済を分割払いに応じてくれない。
・保証会社からの退去要請
・事業者の倒産
2017年、国は家賃債務保証業を営む者の登録に関し必要な事項を定めることにより、その業務の適正な運営を確保し、家賃債務保証の健全な発達を図ることを通じて、もって賃貸住宅の賃借人その他の者の利益の保護を図ることを目的に家賃債務保証業者登録制度を創設しました。
登録されていなくても家賃債務保証業を営むことはできますが、登録の基準は 以下のようにしました。
出典:国土交通省ウェブサイト (001203919.pdf (mlit.go.jp))
- 暴力団員等の関与がない
安定的に業務を運営するための財産的基礎(純資産額1,000万円以上)- 法令等遵守のための研修の実施
- 業務に関する基準を規定した内部規則・組織体制の整備
- 求償権の行使方法が適切である
- 相談又は苦情に応ずるための体制整備
- 法人の場合、家賃債務保証業を5年以上継続していること又は常務に従事する役員のうちに、家賃債務保証業務に3年以上従事した経験がある
- 使用人(事務所の代表者)について家賃債務保証業の経験が1年以上 等
家賃保証会社の審査の現状は、必要書類等確認後迅速に判断しています。ただし過去に家賃の未払い等あると、審査に通りません。賃貸物件を借りることができなくなるので、確実に家賃は支払うようにお願いいたします。